第五回 一人◯◯のススメ を厨二病的な書き方で書いてみた
お兄さん、お時間ありますか?
街を歩く僕を引き止めた一つの声。
僕のこの日のスケジュールは大きく変わることになる。
ーーーーーーーーーーーーーー
先日、僕は初めて行ったショップで店員さんの勧められるがままに水色のジャケットを着ていた。
紺色や黒のジャケットは持っていたが水色は初めてだ。
「なんか恥ずかしいなぁ」
僕はそっとつぶやいた。
「これに白いパンツとか合わせてもらったら最高ですよ。」
店員さんは素敵な笑顔で僕に勧めてくる。
自宅のクローゼットの中を見渡してもあまり淡い色の服はない。
正直水色のジャケットなんて何に合わせたらいいのかもわからなかったし自分に似合うのかもわからなかった。
「なんだかなぁ」
僕の中から阿藤快が飛び出す。
水色のジャケットという難しい問題点を前に優柔不断の僕は中々一歩を踏み出せない。
少し気まずくなった空気の中、店員さんは重い口を開いた
「これ着たら絶対モテると思うんですけどね」
気付いた時には僕は家の前の鏡で合わせ方を悩んでいた。
まさかとは思うだろうが僕は水色のジャケットだけではなく水色のパンツを手に入れた。
つまりセットアップで購入してしまっていた。
あのモテるというキーワードは僕の理性を崩壊させてしまった魔法の言葉だ。
僕はまた不思議な買い物をしてしまった。
そしてセットアップで鏡の中の自分を見る。
どう見ても
銀シャリみたいになってしまった。
しかし悩んでいても、凹んでいても仕方がない。
新しい水色のジャケットを身に纏い僕は玄関のドアを開けた。
季節は春。
暖かい光に照らされる青々しい木々がそよ風にゆられる。
僕はそんな春を感じたくて街へ飛び出した。
見事に雨が降ってる。
しかしここまでは計算内の話だ。
僕は前を向いて歩き出した。
この日は前々から楽しみにしていたオリックスバッファローズ対ソフトバンクホークスの試合が京セラドームで行われる。
もちろんドームなので雨天決行なのだ。
試合開始は18時〜
まだ時間がある。
家から徒歩圏内のなんばまで歩いてみることにした。
雨の中傘をさしながら長い距離を歩くとなんだかBGMが遠くから聞こえてきてイケてる雰囲気を醸し出して歩く。
なんばはいつも通りの賑わいを見せる。
たくさんの人が行き交う。
サラリーマン、カップル、外国人。
そんな中でも僕は水色のジャケットを着ている。
これなら待ち合わせの最中でも僕はここにいるよとしっかり自己主張ができる素晴らしいアイテムだ。
そんな中後ろから声を掛けられた。
「お兄さん、お時間ありますか?」
僕は足を止める。
振り返ると一人の男が立っていた。
あまり立ち止まることはない僕。
しかし純粋な正直者。
嘘はつけない。
「まぁ、少しなら…」
すると彼は素敵な笑顔で、僕に語りかけ出した。
僕は笑いの聖地なんばグランド花月に連れられていた。
先ほどの彼は新喜劇の勧誘。
まさかの1人で歩く僕を引き止め新喜劇の観覧を勧めてきた。
彼は分かっているのだろうか。
銀シャリみたいな格好をした男が新喜劇の舞台を見るということを…
予定は未定という言葉が昔流行った気がする。
僕はいつの間にか所定の席に座っていた。
ここで一つ愚痴を言わせてくれ。
普通キャッチをするときは人数が予定よりも少ない時にするものではないのか?
僕はそう思う。
なのにまさか満員御礼の二階席の一番後ろに座らさせられるとは思わなかった。
「もう、ええわ」
まるで漫才師の締めの挨拶かのように僕はそっと心の中でぼやいたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
大阪に住んで6年。
初めて吉本新喜劇を見た。
まさかこんな感じで見に来ることになるとは思わなかった。
しかしそんな思いを裏切るかのように僕を笑わせてくれた吉本新喜劇はやはり大阪の伝統芸能ではないだろうか?
みなさんもぜひご覧になってほしい。
好きな人とデートに行く時。
気になるあの人と楽しい1日にしたい時。
そんな時は新喜劇に行こう。
きっと幸せな気持ちになれるだろう。
そしてカップルという名のコンビを組めることだろう。
ちなみに終わってからダッシュで向かい野球の試合も観れた。
なんとも、有意義な休みを過ごしてしまった。
余談だがこの日一番笑わせてもらったのは
7回に飛ばす風船がなんとも卑猥な形で、膨らんでしまったことだろうか。
ありがとうございました。